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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
02 第二分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 页
どう考えたのか、それを、元康は反対に、大高近し! ――と、思われると、
「止めよ」
と、駒を抑え、前後の旗本たちを顧みて、
「ひと汗、拭おうぞ」
と、いった。
「伝えますか」
石川数正が、元康の意を疑って、念を押すと、
「伝えよ、全軍へ」
元康は、ためらいなくいう。
止れ。
止れ。
長蛇の列へ、合図は次々に、伝令されて行った。大高の城が近づくと同時に、敵の丸根、鷲津の砦も間近なので、二千の兵と、千余の荷駄は、火気を戒め、声もひそめ、極力、密かに進んで来たのであった。
だが――
ここまで気負い抜いて来た将兵たちは、止れ、の命令に、かえって気を挫かれたように、
「や。どうしたのか」
と、がっかりした。
将兵たちの頭に直ぐ思い出されたのは、元康の初陣ぶりを見て以来、定評に考えられている、御主君の石橋を叩いて渡る堅実主義が――またここでも大事をとって踏み止まったものだろうということだった。
慎重主義、堅実戦法もよいが、およそ兵を動かすには戦いの機微というものがある。機は寸間に過ぎるものだし、機を逸したら、すでに戦の勝目はまったくつかみ難いといってもいい。
「なぜここで」