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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
02 第二分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 页
弓之衆の一隊ではあるが、今日の合戦に、矢交ぜの戦いなどはないと見越して、みな槍を持っていた。
その中に、藤吉郎の率いる三十人の足軽小隊も交じっていた。休息ッ――という声が、部将からかかると、藤吉郎も、自分の組の者へ、
「やすめ!」
と、号令した。
はッと、みんな大きな息をつくと、ほとんど誰もが一緒に、尻もちつくように山陰の草の中へ、腰を落した。藤吉郎は、湯気の立つ顔を、雑巾のような手拭で、ぐるぐるこすっていた。
「おいッ、誰か、おれの槍を持っていてくれんか。この槍を」
彼がどなると、坐ったばかりの部下のひとりが、
「はッ」
と、起ってきて、彼の槍を預かった。そして藤吉郎の歩いて行く方へ、後から尾いて行くと、
「来んでもいい。来んでもいい」
「組頭、どこへお出でになるんですか」
「供は無用。糞しに行くのじゃ、くさいぞ、帰れ帰れ」
笑いながら、崖道の灌木の中へ、沈んで行った。
彼の部下は、藤吉郎のことばを冗談と思ったのか、佇んで彼の行方を見送っていた。
藤吉郎は、南向きの山の傾斜を少し降りて、山鳥が土を浴びる場所でも探すように、頃合な所を見つけると、悠々、腹帯を解いてしゃがみこんだ。