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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

02 第二分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 页

青空文庫

ところが、勅にこたえて、奉仕を申し出る大名はほとんど稀れであった。諸国戦乱の絶えまもなく、各※(二の字点、1-2-22)が自己の存立に汲々としている世情の常とはいっても、浅ましい限りであった。

(これが、皇土皇天の国にあることか)

と、朝臣たちも、雨漏り風の防ぎもない内裏の荒廃をながめて、ただ喞ち嘆くばかりであった。

それは、天文十二年の冬のことであったから、信長の父信秀の立場なども、四隣に強敵をひかえ、微弱な領土と兵力を擁して、一方に勝てば一方において敗れるという有様で、わけても苦境のまっ最中であった。

にも関わらず、勅をうけると、信秀は、すぐ使者を京都に上せ、御料四千貫文を献じ、また、他の有志らと計って、御築土、四足門、唐門などの御修理をもなしとげたのであった。

「いや、お汝の父は、勤王家であるばかりでない、武人にはめずらしい、敬神家でもあったよ」

ごきげんの麗しい日であったとみえ、義輝将軍は、初めて会う信長に、よく話した。

「畏れ多いことじゃが、伊勢神宮の内宮は、往古から二十一年ごとに、新しゅう改造する制であったが、応仁の乱以後は、そのことも廃れて、ここも荒るるにまかせてあったを、お汝の父信秀には、その御式の復古に、いたく力を尽されたそうな。