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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

02 第二分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 页

青空文庫

「もう、疾くにございませぬ」

「では、勝手元の金子は」

「お台所のほうも、ずっと前から少しも御用意がございません。で、その由を、先々月か、お耳へ入れましたところ、そうか、よいようにしておけ、と仰っしゃるだけなので、ぜひなく、やりくり算段をしてお暮しを弁じておるような始末で――」

「ふウ……む。では金子はないのか」

「あるはずはございません」

「はてなあ?」

「いかがなされました」

「俄に、人を招いて、振舞いたしたいのだが」

「酒、お肴のことぐらいなら、走りまわって、ごんぞが、町人たちから借り立てて参りまするが」

「そのことよ」

膝を叩いて、

「ごんぞ、頼むぞ」

藤吉郎は、渋団扇を取りよせて、体のまわりを大きく煽いだ。もう秋風も立ち、桐畑の桐の葉も夥しく落ち出しているが、やぶ蚊はなかなか多いのだった。

「して、お客様は」

「御普請の棟梁どもだ。やがて顔をそろえて参るだろう。おれの屋敷へ集まれと、お城で云い渡しておいたからな」

ごんぞを、使いに出して、藤吉郎が裏庭で、行水の湯を浴びていると、表口に誰か客の声がした。下婢が出て行った。

「どなた様でございますか」

客は、笠を脱って、