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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
02 第二分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 190,406 字 · 381 页
「通れ」
と、許し、そしてまた、
「静粛に、御普請場にて暫時待っておれ」
と、いい渡した。
彼の概算で、頭数は、ほとんど洩れなく集まった。職人どもは、仕事場に整列したが、不安と疑いに、ざわざわ囁き合っていた。
やがて藤吉郎は、一同の前に立った。唐橋の口で引っ提げていた太刀を、ここでも鞘に入れず、引っさげていた。
「騒めくなッ」
太刀を上げて、その切っ先で命じるようにいった。
「――列を正せ!」
号令である。
職人どもは、びくッとしたが、棟梁たちの顔には、せせら笑いが泛んだ。年齢からいっても、世俗的に見ても、彼らの眼からは、
(なんだこの青二才が――)
としか思えない。
その藤吉郎が、頭から自分らへ、胸を張って臨むなど、片腹痛いと思うのである。それとなお、太刀を抜いて、高圧的に出るなど、生意気な仕ぐさだ――とも反感を催したふうだった。
「一同の者へ云い渡す……」
藤吉郎は、まるで無頓着かのように、大声で云った。
「今日より不肖木下藤吉郎、君命によって、ここの御普請を承ることになった。きのうまでは山淵右近どの、奉行に就かれていたが、今日よりは木下藤吉郎が代って奉行いたす。