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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
01 第一分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 页
もとより土豪の一族なので、本鎧ではないが、籠手脛当をつけ、差料も大振りな陣刀に代えていた。
「さては、出触れだな」
と、一同は早くも察していた。
どこからどこまで、という確とした領土もない代りに、どこの城に所属しているとか、誰に随身しているとかいう、明瞭な味方も敵もないのが土豪である。
だが、――それにしても時々、合戦には出る。
同じ土豪から、自分の一族の勢力圏内を犯されたとか、或いは、国主から味方に頼まれるとか――折入って遠国の大名からでも、通謀を依頼されるとか――などの場合。
しかしそれは多く、金や報酬に依ってうごくのだが、小六はまだかつて利のために動いたことはない。
それはこの近国の織田家でも認めていた。三河の松平家でも、駿遠の今川でも知っていた。だから、土豪とはいえ、自然重きをなしていたし、蜂須賀党を土地から除こうとする者もなかった。
その家長からの触れなので、すわとばかり、一族は駈けつけて来たが、広庭へむらがって、ふと築山を仰ぐと、小六正勝は、折から、薄暮の空に見える二日月の下に、黒革の胴を着こみ、大太刀を横たえて、軽装ながら、どこか家党の頭目らしい貫禄をそなえて、石像のように、黙然と突っ立っていた。