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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
01 第一分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 页
そして、水を打ったように、数百人の一族が、ひそまり返ると、甥の渡辺天蔵を、きょう限り義絶する旨を宣言して、その始末を、明白に述べた末――
「が、これは、家長たるおれの不行届でもある」
と、不徳を謝し、
「天蔵は、逃げうせたが、草の根を分けても誅罰せずにはおかん。もし、彼を生かしておいたなら、土豪蜂須賀は、百年の後も、野盗の徒と過られるだろう。お前らは、お前らの面目のために、祖先のために、子孫のために、天蔵めを、打ち殺せ。――おれの甥だなどと思うな。彼奴は蜂須賀一党の賊だぞ!」
云い渡しているところへ、物見にやった者が駈け戻って来て、告げることには、
「……御厨村のほうでも、渡辺天蔵とその一類が集まって、一戦をも辞せずと、物々しく固めている由にござります」
と、あった。
敵が、渡辺天蔵と聞いて、彼らはすこし張合いぬけした様子だったが、事の顛末と、
――一族の名のためだ!
と小六から聞かされると、奮い立って、真っ黒に、武器蔵へなだれて行った。
武器蔵には、驚くばかり多量な武器が、貯蔵してあった。
源平、建武、応仁の乱とつづいて、何百年かにわたって作られて来た武器は、合戦のたび、山野にも捨てられたが、その数は、夥しいものに違いなかった。