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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

01 第一分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 页

青空文庫

わけて、近頃では、国々の合戦はやむまもなく、人の住む所には、不安と暗黒が漲っているので、その心理が、武器を大切にした。どんな百姓の家にでも、武器があった。また、槍や、刀なら、食物の次に、すぐ金にもなって売れた。

蜂須賀党の武器蔵には、先祖以来の物もずいぶんあったが、急激に殖えたのは、小六の代になってからであった。――しかしまだ、その中に鉄砲は一挺もなかったのである。

が、せっかく成功しかけたその鉄砲は、天蔵が盗んで行った。小六の憤怒は、絶頂に達していたといっていい。

「この上にも、一戦をも辞せぬなどとは、八ツ裂きにしても飽きたらぬ人非人。彼奴の首を見ぬうちは、この革胴を解いては寝ぬぞ」

小六は、門出に云った。

そしてすぐ、人数を率い、御厨村へ向って殺到したが、村近くまで来ると、

「あッ、火の手だ」

と、一同は、足を止めて、夜空を見まもり合った。

水田の彼方に、土橋が見える。赤い夜空に、点々と人影がうごいている。さては敵か――と先鋒から一人放って見せにやると、

「天蔵の徒が、火を放って、掠奪を始めたので、逃げ惑うて来た村民だそうでございます」

と、いう報告。