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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

01 第一分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 页

青空文庫

と、いっているように、威張って眠っていた。

もう鼓の音もしない。白桃の花に、薄い残月があった。

宵に快睡したので、眠くもなかった。日吉は、ただ漫然と、時を空費していられなかった。働くか、さもなければ、楽しむか、どっちかにはっきりしていないと、すぐ欠伸が出た。

「この辺でも、掃いているまに、夜が明けるだろう」

竹箒を持って、厩のまわりを掃き始めた。主人の眼が届かないところ程、馬糞や落葉や藁くずが溜っていた。

「誰だ、今頃。……箒を持っている者は」

誰か、どこかで、そういった者があった。

箒を休めて、日吉は辺りを見まわした。

すると、再び、

「ここじゃ。そちは昼間の針売りだの」

日吉は、ようやく見つけて、

「あ、殿さま」

口の裡で答えた

橋廊下の角にある雪隠の手洗所の窓からだった。嘉兵衛の顔がそこに見えた。

酒のつよいお使者を相手で、量を過したらしく、嘉兵衛は、醒め際を、つかれ気味に、

「もう、夜明け近いか」

嘉兵衛は、窓から消えると、縁の雨戸をあけて、残月を見ていた。

「まだ、鶏は啼きませぬで、夜明けには、ちと間がございましょう」

「針売り、いや、猿と呼ぼう。