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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

01 第一分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 页

青空文庫

「それに在すお方こそ、山城守道三様にござりまする。――ごあいさつを」

いうと信長は、

「むう。左様にてあるか」

と、初めて、柱から背を離して、坐り直した。

一礼して、

「これは、初めて御対面つかまつる。織田上総介信長にてござる。お見知りおきください」

彼から、改めて、こう挨拶すると、道三も気色を柔らげて、

「わしが山城じゃ。かねがね、一度はお会いせいではなるまいと存じおったところ、今日、宿望を果して祝着」

「信長も、近頃うれしいことの一つです。まずまず、舅殿には、老いて益※(二の字点、1-2-22)、御健勝に渡らせられ、何よりでござる」

「なに、老いてとな。山城もはや、ことし六十を迎えたが、まだまだ、老いた気はせぬ。お許らはちょうど、卵の殻を出たばかりの雛鳥よ。はははは、男ざかりは、六十越えてじゃ」

「頼もしい舅殿を持ち、信長は仕合わせ者でござる」

「そうか。何せい吉い日ではある。道三もたんと生きよう。次の会う日には、孫の顔なと見せなされ」

「心得てござる」

「気のさくい聟どのよ。――丹後」

「はッ」

「膳部のしたくを。――お湯漬でも」

眼で――道三は何か、丹後に意をのみこませた。