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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
01 第一分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 页
荷駄の尻っ尾へついて来い、荷駄の尻っ尾へ」
と、眉をひそめた。
「はい、はい」
唯々として、日吉は、行列の最後方に尾いて歩いた。それすら彼は夢心地になるほど欣しかった。
信長の行列がかかると、那古屋の町々は、掃いたように、往来が開かれ、廂の下や辻には、人間の頭がたくさん土下座していた。
日吉は、初めて、そういう往来の真ん中を歩いた。そして行列の前方に、遠く主人の背なかを見ながら、
(この道だ。この道だった)
と、思った。長いあいだ探しあぐねた本道へ、今ようやく、出て来たという心地である。
だが、その主人は、武者を率いて、町を歩くにも、傍若無人だった。少しも取り澄してはいないのだ。家来たちと、話はするし、笑うし、喉が渇いたといっては、瓜など齧って、馬上から、瓜の種を、吐きちらして歩いた。
那古屋城が、前に迫った。
濠の水は青く沸いていた。
唐橋を渡って、行列は城門へ蜿蜒と隠れて行く。――日吉は、生れて初めての、橋を越え、門を潜った。
秋の頃だった。
刈入れに忙しい人々を田の面に見ながら、てくてくと中村へ急いでゆく小背丈な若侍があった。
「おっ母さんッ」
若侍は、筑阿弥の家の前まで来ると、恐ろしく大きな声で訪れた。