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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

01 第一分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,256 字 · 361 页

青空文庫

何を云い出されるかと、内心惧れおののいていた。

いくら山を検分しても、立木の数など、素人に分るものでないし、実際にまた、これまでの炭薪奉行は、台帳に書いてある数量をそのまま、鵜のみにしていたものだが、こんどの新奉行は、その手に乗らなかった。

「商人ども」

「へい……」

「この台帳の数と、実際の木の数とは、だいぶ違うではないか」

「……はあ」

「はあではない。これは如何なるわけだ。その方どもは、多年の御恩顧を、ありがたいとは思わず、かえって利に狎れて、御領主を欺き奉り、かような嘘を書き上げて、暴利をむさぼりおったな」

「……め。滅相もない」

「然らば、何でこのように数が違うのか。このままの数で炭薪をお納めするからには、御納庫になる品も、百石の炭は六、七十石、千石の炭薪は、実際には六、七百石しかお納めいたさぬのであろうが」

「いえ、なかなか、そのような理では」

「だまれ。多年山より炭薪を伐り出して職とするその方どもが、かような大きな眼違いをする筈はない。心得て致したとあれば、奉行を欺き、御領主の国費を騙り取った大罪と申さねばならぬ」

「恐れ入りました」

「一同の家財を没収し、断罪にしてもよいところだが、今までの役人方の手落ちもある。