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ぎじんのすがた

日本の怪談

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本の怪談』。同一底本的分册已合并为一书。收入:義人の姿、宝蔵の短刀、村の怪談、猫の踊、幽霊の自筆、狐の手帳、貧乏神物語、怪僧、庭の怪、八人みさきの話、一緒に歩く亡霊。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,030 字 · 115 页

青空文庫

横山がこう云って体を寄せると、吉平はそのまま玄関へあがって静に横山と向き合って坐った。

「私が今日参上いたしましたは、他のことでもございません、紀州の師匠から、弓の免許状を送って来ることになっております、もしまいりましたなら、何とぞ封のままで火の中に入れてくださるように、これを申しのこしたから、重ねておねがいにあがりました」

「委細承知いたした、しかし、もう飯時でござるから、水漬なりと進ぜよう、ゆるゆる話して往かるるがいい」

横山は平然としていた。吉平の顔にも人懐しい影が見えた。

「それでは折角のお詞でございますから、饗応にあずかりましょう」

横山は静に手を打って人を呼んだ。横目の五右衛門と云うのが顔をだした。

「吉平殿に水漬を進ぜるから、檜物産から新らしい榧をとりよせて、精進にして出すがよかろう」

五右衛門は承知して出て往った。横山は吉平を見て、

「他にまだ云いのこすことはござらぬか」

「もう他には、何もございません」

二人はそれきり黙って坐っていた。其処へ五右衛門が榧の膳を持って来た。茶碗に水漬の飯を盛り皿には一撮みの塩も入れてあった。

「甚だ粗末でござるが、これを」