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せっしょうせき

日本の諸国物語

楠山 正雄

楠山正雄『日本の諸国物語』。同一底本的分册已合并为一书。收入:殺生石、葛の葉狐、和尚さんと小僧、長い名、鬼六、物のいわれ、赤い玉、安達が原、雷のさずけもの、白い鳥、忠義な犬、春山秋山、人馬、松山鏡、三輪の麻糸、夢占、瓜子姫子、姨捨山、山姥の話、しっぺい太郎。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,040 字 · 158 页

青空文庫

真ん丸なお月さまが、野にも山にも一面に照っていました。お百姓はおかあさんのそばへ行って、何気なく、

「おかあさん、今夜はほんとうにいい月ですね。お山に登ってお月見をしましょう。」

といって、おかあさんを背中におぶって出かけました。

さびしい野道を通り越して、やがて山道にかかりますと、背中におぶさりながらおかあさんは、道ばたの木の枝をぽきんぽきん折っては、道に捨てました。お百姓はふしぎに思って、

「おかあさん、なぜそんなことをするのです。」

とたずねましたが、おかあさんはだまって笑っていました。

だんだん山道を登って、森を抜け、谷を越えて、とうとう奥の奥の山奥まで行きました。山の上はしんとして、鳥のさわぐ音もしません。月の光ばかりがこうこうと、昼間のように照り輝いていました。

お百姓は草の上におかあさんを下ろして、その顔をながめながら、ほろほろ涙をこぼしました。

「おや、どうおしだ。」

とおかあさんがたずねました。お百姓は両手を地につけて、

「おかあさん、堪忍して下さい。お月見にといってあなたを誘い出して、こんな山奥へ連れて来たのは、今年はあなたがもう七十になって、いつ島流しにされるか分からないので、せめて無慈悲な役人の手にかけるよりはと思ったからです。