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せっしょうせき

日本の諸国物語

楠山 正雄

楠山正雄『日本の諸国物語』。同一底本的分册已合并为一书。收入:殺生石、葛の葉狐、和尚さんと小僧、長い名、鬼六、物のいわれ、赤い玉、安達が原、雷のさずけもの、白い鳥、忠義な犬、春山秋山、人馬、松山鏡、三輪の麻糸、夢占、瓜子姫子、姨捨山、山姥の話、しっぺい太郎。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,040 字 · 158 页

青空文庫

と、蟹がいいました。でも猿は、

「ぐちをいうな。それよりか駆けっくらで来い。」

といって、かまわず臼を坂の上からころがしました。臼はころころころがって行きました。猿もいっしょに追っかけて行きます。しかたがないので、蟹もむずむずあとからはって行きますと、ちょうど坂の中ほどまで行かないうちに、餅は臼の中からはみ出して、道ばたの木の根にひっかかりました。そして、臼ばかりころころ下までころげて行きました。そんなことは知らないものですから、猿もいっしょに臼を追っかけて、どこまでもころがって行きました。

蟹は途中、木の根に白いものが見えるので、ふしぎに思ってそばへ寄ってみますと、つきたての餅でしたから、「これはうまい。」と思って、一人でおいしそうに食べはじめました。猿はせっかく下まで駆けて行ってみると、空臼だったものですから、がっかりして、

「こらこら、早く餅をころがさないか。」

と下からどなりました。すると蟹はあざ笑って、

「つきたての餅が坂をころがるものか。今に堅くなってお鏡餅になったら、ころがしてやろう。」

といいました。猿は腹を立てましたが、自分からいいだして、したことですから、しかたなしに蟹にあやまって、おしりの毛を抜いて蟹にやって、半分餅を分けてもらいました。