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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
「ここへ持ってらっしゃい」
白い前垂の女は島田に結うていた。彼女はその盆をテーブルの隅へ置いてからお辞儀をして出て往った。
「つまらんものがありますから、さしあげましょう、そのうちに何か出来ましょうから」
女はビンを持ってそれをコップに注いで謙作の前へだした。謙作はここでぐずぐずしていては船に遅れるから、一ぱい飲んだらすぐ帰ろうと思った。
「それでは折角ですから、一ぱい戴きましょう」
謙作はちょとお辞儀をして、煙草を前の灰皿に置いて微青く見えるその液体を口にした。それはウイスキーの薄いような味の物であった。と、その液体の匂いであろうかそれとも鉢の花の匂いであろうか、快い牛蒡の匂のような匂が脳に浸み徹るように感じた。
「如何でございます、お口にあいまして」
謙作はふた口にそれを飲んでしまってコップを置いた。
「たいへん甘い物ですね、……では、遅くなりますから、これで失礼いたします」
謙作はそう云って体を起そうとした。柔な女の足端がその右の足首にふわりと触っていた。謙作はその足をのけるのが惜しいように思われた。謙作はそうして鉢の花に眼をやった。今まで微白いように見えていた花は鮮な真紅の色に染まっていた。