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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
謙作はそれが忌いましかった。
「今日はないが、三日目にありますからね、ちょと往って来るのです」
「そう」
女は冷笑を含んだように云った。謙作はこせこせとワイシャツを着、ズボンを着け、靴もあるので靴も穿き、それから上衣に手を挿しながら見ると、時計も紙入もちゃんと箱の中に入れてあった。彼はふと金がどうかなっていはしないかと思ったが、そこで検べることも出来ないので、それを上衣の内兜に入れ、時計を手首に着けた。
「そんなにせかせかしたって、会社なんかが見つかるものですか」
女はもとの枕で寝ていた。
「なに、海岸通りへ往ったらありますよ、ちょと往って来ます」
「御飯は」
「どこかで喫いましょう」
「そう」
謙作は入口と思われる方へ往ってそこの扉を開けた。そこは宵に見たままの室であった。彼はその室を横切って衝立の立っている方へ往った。そこの右側の棚には外套も帽子もステッキも宵に置いたままであった。彼はそれを持って急いで外へ出た。
廊下は明かるかった。謙作は廊下へ出ると内兜に手をやって紙入を出してみた。金にはすこしも異状がなかった。彼は幾等か女に置いて往かなくてはならないと思ったが、なんだかばかばかしくもあった。