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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
それでも車は止まらなかった。謙作はしかたなしに車を代えて走らしたが、その車もまたどこにも止まらなかった。車の上を一日照らしていた陽が何時の間にか掠れてしまった。
「もう宜い、おろしてくれ」
謙作は車からおりて車賃を払って歩こうとした。
「おや、お帰りなさいまし」
二階の窓からあの女が顔を出していた。謙作は内へ入りながら俺はどうかしていると思った。
翌日になって謙作は己の身が恐ろしくなったので、警察の保護を願おうと思って、警察を尋ねて往った。
「警察はこの前ですよ」
いくら前へ往っても警察はなかった。警察署がなければ交番でも宜いと思った。
「交番ならこの街路を抜けたところにありますよ」
しかし、交番も見つからなかった。謙作はがっかりして歩いていると、何時の間にか洋館の前へ来ていた。二階の窓にはあの女の顔。
その翌日、謙作はその町を逃げだすつもりで三ノ宮駅へと往ったが、三ノ宮駅も見つからなかった。気が注いてみると女の顔が二階の窓から覗いていた。
その夜、彼の女は謙作の頭を己の胸のあたりに持って来さして、その耳に何か囁いていたがなんと思ったのかその体を起さなかった。