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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页

青空文庫

「どうもありがとうございます、では、後はお葉ちゃんにね」

天風は婢の声を後に聞きながら、肩を張って外に出たが、あの二円があれば自動車賃があって、女にもまとまって十円紙幣をくれてやることができると思った。彼は惜しくてたまらなかった。彼は無意識に一間ばかり歩いて気が注いた。四辺はひっそりして己よりほかに歩いている者はなかった。彼は狭い街を出て、左に電車通りを往って、すぐ左のこれも狭い街に折れた。

そこは初めの街よりも暗かった。街の両側にはバラック建の高低の一定しない簷が続いて、それにぼつぼつ小さな微暗い軒燈が点いていた。天風はその微暗い街を往って、手前が二階建の貸事務所になり、前が印刷屋になった間の巷の口へ往った。巷の奥には二つばかりの軒燈が暗い中に微な明りを見せていた。

天風は巷の口に立って待っていたが、なかなか女は出て来なかった。天風は待ちどおしかった。天風はそこで、あの婢と女とは親しいようだから、何かくだらないことを喋っているだろう、それにしてもあまり遅いと思って、また巷の奥の方へ眼をやったところで、ふと人影が見えた。彼はやっと出て来たと思って安心した。