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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
広巳は鵜に興味がなくなったので、天水桶の傍をぐるりと廻って、社の横手へ往ってそこの階段へ腰をかけた。
豆腐屋の喇叭の音がどこからかきこえて来た。広巳は腕組をして眼をふさいでいた。二人伴が横手の入口から入って来た。一人は素肌に双子の袷を着て一方の肩に絞の手拭をかけた浪爺風で、一人は紺の腹掛に半纏を着て突っかけ草履の大工とでも云うような壮佼であった。
「なんだ、暢気そうに睡ってるじゃねえか」
「終夜稼いだお疲れか」
二人は斜に拝殿の前の方へ往こうとしていた。広巳の眼が大きく開いた。
「野郎待て」
右側を往っていた双子がちらりと揮りかえった。広巳はついと起った。双子は有意らしい沈静を見せた。
「俺に用があるのか」
「あるとも、俺を盗児と云ったのは、何人だ」
「ぬすっと、何人が汝さんを盗児と云ったのだ」
広巳はずいと進んで往った。
「汝か、伴か二人のうちだ」
双子はそれと見て体を整えた。
「云わねえ、云うものかい、盗児と云うものかい」
「云わねえことがあるか、終夜稼いだと云やがったくせに、云やしないもすさまじいや」
「終夜稼いだと云ったっていいだろう、急ぎの仕事がありゃあ、終夜稼があな」