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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
どうか夫人がとは夫人が引き別けてやってくれと云うのであった。女はちょっと老人の方へ眼をやるようであったが、対手にはならなかった。その時広巳は二人の対手を膝の下に押し敷いていた。
「豪いわ、ねえ」と云って気が注いたように、「おや、貴下は」
貴下は何某ではないかと云う知っている人を探し求むる詞であった。広巳は拳を揮いながら眼をやった。それは知っている人ではなかったが、どこかで逢ったような気がするのであった。広巳はきまりが悪かった。広巳は二人を放して立った。広巳の口元には血があった。広巳にとりひしがれていた二人は、それと見て飛び起きて広巳に躍りかかろうとした。二人の眼はぎらぎらと光っていた。紺の腹掛の左の頬は血だらけになっていた。女はついと広巳の前へ出て広巳をかばって立った。
「およしなさいよ、この方は、もう手を引いたではありませんか、それに貴下方は二人じゃありませんか」
二人で一人にかかって往くのは卑怯だと云うのと同じであった。紺の腹掛は立ち縮んだ。双子の眼は依然としてぎらぎらと光っていた。
「もういいではありませんか、さっぱりなさいよ、男は斬り結んだ刀の下で笑いあうと云うではありませんか」