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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
「今朝から生暖かい、どうも天気が落ちたと思ってたが、やっぱりそうだったか」
「御神酒をあげましょうか」
「そうだ、そうしてくれ」
「へい」
定七は腰をあげた。蛇は二人の正面になった柾の方へにょろにょろと這っていた。定七は蛇の方を見い見い斜に往って表庭と入口の境になった板塀の方へ往って、そこにある耳門の桟を啓けて出て往った。広栄は顔を右斜にして背後の方を見るようにした。
「おい」
それは女房を呼ぶところであったが返事がなかった。
「おい」
それでも返事がなかった。広栄はすこしじれた。
「おい、お高、お高」
「呼んだのですか」
それは気のない返事であった。
「ちょっとお出で」
「ちょっと待ってくださいよ」
「何かしてる」
「衣服の始末をしてるのですよ」
「衣服ならいいじゃないか、ちょっとお出で、お出ましになったのだから、あの楓の」
「そう」
「だから、ちょっとお出でよ」
「ちょっと待ってくださいよ」
「衣服は後でもいいじゃないか」
「だって」
広栄はちょっと顔をしかめたが、もう何も云わないで蛇の方へ眼をやった。耳門の方へ往っていた蛇はその時こちらの縁側の方へ方向をかえた。それは何かを暗示しているように思われた。