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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
戸はすぐ啓いた。定七は広栄の傍へ来て三宝を執った。
「それでは」
「そうか」広栄は松葉杖を執りなおしてぴょいぴょいと土蔵の中に入った。広栄が入ると定七も入って金網戸を締めた。
「鼠はいいかな」
「よろしゅうございます」
「彼奴は油断もすきもできないから」
「そうでございますよ」
微暗い土蔵の中には中央に古い長櫃を置いて、その周囲に注連縄を張り、前に白木の台を据えて、それには榊をたて、その一方には三宝を載っけてあった。
「それでは、三宝をとりかえてくれ」
「へい」
定七は何時の間にか鍵を腰にさして三宝ばかり持っていた。定七は白木の台の前へ往って三宝を除り、持っている三宝をそれに置きかえた。
「いいか」
いいかとは準備が出来たかと云うのであった。
「よろしゅうございます」
「それでは」
広栄は一脚ぴょいと進んで、そのまま蹲んで白木の台に向って拝礼をはじめた。そして、ちょっとの間合掌していてから起きた。起きて長櫃の方へ眼をやった。
「お塔は」
「そうでございますよ」
「拝見しよう」
広栄は斜にぴょいぴょいと往って長櫃のうえへ眼をやった。そこには小さな玩具のような三寸位の富士形をした微白い物があった。