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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
「私の家は、私と、細君と、それから弟が一人あって、その弟は、今度の戦役に従軍して、金鵄勲章ももらっておりますが、べつに他人から、家庭のことを、とやこう云われるようなことはないが、それは何かの」
「だめだ」松山は叱りつけた。「そんなことを云っても、種がちゃんとあがってるのだ」
「種と云いますか」
「そうだ種だ、種があがっておる、鮫洲の大尽と云や、人に知られた家で、人の亀鑑になる家だ、その家が紊乱さしては、けしからんじゃないか」
広栄は何のためにそんなことを云うのだろうと思った。
「それは、どうも、それは、何かの」
「だめだ、幾何隠したって証拠がある、それとも君は、それを知らないのか、町内に知らぬは主翁ばかりなり、君は気が注かんのか、おめでたい人間だな」
広栄は不思議でたまらなかった。
「それは、何かのまちがいだ」
「まちがいだ、まだそんなことを云うか、それじゃ、その証拠を見せてやろう、驚くな」松山は右の袂へ手をやって半紙に書いた物を二枚出して、「おい、これを見ろ」
松山はそのままそれを広栄の前へ投りだした。広栄はしかたなしに拾ってまずその一枚に眼をやった。それはお杉の出したものであった。