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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
広巳は頷いておいて跫音をさせないようにして縁側をあがり、障子の引手に体を当てないように用心しながら入った。定七は広巳の入るのを待っていた。定七は急いで口を持って来た。
「また、来たのですよ」
広巳は囁きかえした。
「何人だ」
「やっぱり破戸漢ですよ」
「そうか」
その時客座敷で声がしはじめた。
「もう、いいだろう、鮫洲大尽と云えば、何人知らぬ者もない家の主人だ、何時までもぐずぐずしていられては困る、それとも返事を延ばしておいて、警察へでも云ってやるつもりかね」
それは嘲りを帯びた声であった。
「そんなことはない」
「それじゃ、警察へは云ってやらんのか、しかし、云ってやろと思えば、云ってやってもいいよ、ほんとを云や、吾輩も悪いのだ、罪悪を犯しておいて、それに未練があって、細君をもらいに来ているのだから、君に怒られて、まかりまちがえば、警察へ突き出されて、赤い衣服を被せられるかも知れんと思って、それを覚悟で来ているのだ」
広栄の返事はなかった。広巳の眼には怒が湧いた。広巳は定七の耳へ口を持って往った。
「関係があるから、渡せと云って来ているのか」
「そうですよ」
「けしからんぞ」