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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
それはまた路が不安になって来たがためであった。菊江は後を揮返った。菊江は路伴れになる人がないかと思ったのであった。雑貨店の前に何人か一人立っているようであったが、それはこっちへ来る人のようでもなかった。右の方のたらたら降りの街路の方に靴音が聞えて、肥った労働者のような男がこっちへ向って来た。まだに麦稈のような夏帽子を被っている肥ったその男は、街路の真中を歩きながらこっちへ眼を持って来た。菊江は急いで往きちがった。
そこはもう三叉路であった。街路から往くと菊江の家は、右のほうになったそのたらたら降りの街路から往くのであった。で、菊江はすぐこっちから往こうかと思ったが、その路は近路にくらべると二町あまりも遠かった。それに街路の上ではつまらないものの眼にも注きやすいと云う考えも起って不安であった。それは草の中の近路と同じような不安であった。それに微月があって草の中の路も暗くはなかった。どうせ路伴れがないなら路の近いほうが良いと思った。菊江はまた近路を往くことにして左の方の明りのある街路へ往った。
沙利を敷いた路は思うように歩けなかった。左側の街路に沿うた方を低い土手にして庭前を芝生にしてある洋館の横手の方で犬の声がした。