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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页

青空文庫

政雄は思いきって起きて階子段を駈けおりた。下には電燈が点いていた。平生点けっぱなしにしない電燈が点いているのは老人がもう起きている証拠だと思って政雄は心丈夫に思った。政雄は安心してそこの往き詰めの開き戸を啓けて微暗い縁側に出、その見附にある便所の戸を啓けた。と、その時便所の中から出て来たものがあった。政雄はびっくりしてその顔を見た。それは細面の大きな長い舌を出した女であった。政雄は一声叫ぶなりそこへ倒れてしまった。

政雄はそのうちに意識がよみがえって来た。大きな長い舌がそこにだらりと垂れていた。政雄はまた叫んで逃げようとした。

「尾形さん、どうしたのだ」

政雄は何んかにつかまえられていて動けなかった。政雄は老人夫婦の室に寝かされている己を見た。

「尾形さん、どうしたの、私が便所から出ると、びっくりして倒れたのですが」

それは老婆の声であった。政雄は便所から出て来た老婆の顔に怪異を見て気絶したのであった。

政雄はその日から痴のようになって雑貨店の二階に寝ていたが、十日位してやっと精神が平常に復して来た。精神が平常に復して来ると安閑としてはいられなかった。