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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页

青空文庫

「いや、たしかにお宅の表札に覚えがあります」

そこへ十六七になるらしい、小供小供した小女が出て来た。

「お母さん、なに」

「この間の日曜ね、あの晩に、家へ、あの方の知った女の方がいらしたとおっしゃるが、家へはあの晩、何人もこなかったわね」

「ああ、だけど、お母さんが、台所から、お客さんがあったじゃない、と云ったじゃありませんか」

「そう、そう、それが日曜の晩」

「そうよ、何人も来やしないわよ、お母さんは、好い耳ねえって、私が云ったじゃない」

「ああそうだったね」

「その後で、表に人が立ってるようだから、私がお母さんに云ったじゃないの」

「そう、そう、それは私も覚えている」

親子の話が、ちょと切れかけたので、私は、

「その時、表にいたのは私ですよ、細君が入ったものですから、後から伺おうと思ってると、お嬢さんの声がしましたから、きまりが悪くなって、帰りましたよ」

一昨日の櫛と云い、どうも変なことばかりである。

「でも、変ねえ、たしかに女の方が入りましたか」

と、年老った女は厭な顔をした。

「たしかに入りました、お召かなにか、茶の立縞の羽織を着た、面長な、年はもう二十五六です、ちょと好い女ですよ」