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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
と、彼は五六日前に朋友の一人が牡蠣船に往って、そこの婢から筑前琵琶を聞かされたと云ったことを思いだして、俺もこれから往ってみようかと思った。しかし、彼は一人で料理屋へ往ったことがないので、眼に見えない幕があってそれが胸さきに垂れさがっているようで、おっくうですぐ往こうと云う気にはなれなかった。
秀夫はその牡蠣船では牡蠣料理以外に西洋料理も出来ると聞いていたので、西洋料理の一皿か二皿かを執ってビールを飲んでも好いと思った。西洋料理を喫ってビールを飲むことなら朋友と数回やっているので彼にも自信があった。それでポチを五十銭も置けば良いだろうと思った。彼は欄干を離れて下の方へ歩きかけた。牡蠣船のある方の岸は車の立場になっていて柳の下へは車を並べ、その傍には小さな車夫の溜を設けてあった。車夫小屋と並んで活動写真の客を当て込んで椎の実などを売っている露店などもあった。秀夫はその前を通って使者屋橋の袂にその入口を向けた牡蠣船の前へ往ったが、小さな階段によって船の中へおりて往くその入口を正面にすると、足が硬ばったようになって入れなかった。
秀夫は後戻りをして牡蠣船の前からまた新京橋のほうへ往って最初の場所に立って見た。