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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页

青空文庫

で、も一度月給を貰った時に往ってみようと思った。そう思いながら彼は淋しそうに歩きだして新京橋を上へと渡った。

その翌日は夕方から暴風雨になって一頻り荒れたが十時過ぎになってぱったり止んだ。秀夫は寝床の中へ入っていたが、天気が静まるとぶらりと戸外へ出て、往くともなしに新京橋の方へ往った。一度絶えていた人通りがまたはじまって、ぼつぼつ人が往来していた。

秀夫は橋の上へ往くと牡蠣船の方を見た。牡蠣船は障子を締め切って壮い酔どれの大きな声がしていた。

「今晩は」

壮い女の声が傍でした。秀夫は何人か他の人に云っているだろうと思ったが、それでも顔を向けた。と、牡蠣船の※(「女+朱」、第3水準1-15-80)な女が立っていた。それはたしかに見覚のある蝋細工のような※(「女+朱」、第3水準1-15-80)な顔をした女であった。

秀夫は黙ったままでその顔を見つめた。と女はにっと笑った。

「琵琶を弾く姐さんを、今晩はもう見に来てくれませんでしたね」

秀夫はきまりがわるかった。

「私は帰る処ですが、おかまいなければ、これから私の家へ遊びに往きませんか、何人も他におりません、独身者ですから」