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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
芳郎はその間一二度東京へ帰って往ったが、すぐ熱海へ来て相模屋にいた。そして、三月になって熱海の梅が散る時分になって、喜美代の母親の病気が癒ったので、その間に結婚式をあげようと云うことになった。ところで、その当時政府の民党圧迫がその極に達して、運動ができないようになっていたので、結婚式も杉浦の別荘であげ、芳郎は当分そこで暮らすことになった。
そして期日を定めて、その期日ももう三日の後に迫った。芳郎は朝から東京の邸から来ている使用人と結婚の準備に関する相談をしたが、その夜枕に就いたところで怪しい夢を見た。彼は演説の腹案をこしらえるために、邸の傍の坂路をあがっていたのであった。そして、前のほうを見ると、赤い花をさした己が去年から探している女が歩いていた。で、今日こそどうしても見失わないぞと思って走って往ってみると、その日は女は男の来るのを待っているように揮返って立っていた。芳郎が近寄ると女はにっと笑って、
「貴郎は私と結婚なさるはずじゃありませんか」
と、束髪にさした赤い花を抜いて彼の手に握らした。花は陽の光を握ったようにほのかな温みがあった。
翌日になると芳郎は東京へ帰ると云いだした。