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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页

青空文庫

(おりる路をまちがえたろうか)

そのあたりですこし位路をまちがえたところで、そんな広い畑はなかった。

(おかしいなあ、狐につままれたと云うことを云うが、狐にでもつままれたろうか)

その時ふふうと云うような何物かが鼻の端で息をするようなけはいがした。彼はびっくりして右側へ眼をやった。そこには長い長い獣の顔が二つ三つうっすらと見えていた。

(おや、馬がいるのか)

彼はまた左側へ眼をやった。そこにも長い獣の顔が一つ二つ浮いていて、それが鼻息をたてているのであった。

(それじゃ、どっかの牧場か)

なににしても馬に噛まれてはたいへんであるから、噛まれないようにと用心しながら歩いたが、そのあたりに牧場のあるのはおかしかった。彼は朝夕に散策もすれば、写生にも出てそのあたりの地理に精しかったので、牧場のあるのが腑におちなかった。

(もし、牧場だとすると、たいへんな処へ往ってるのだ)

彼はちょっと立ちどまって考えた。――学校のてまえにあった五六軒のカフェーも二軒のおでんやも見なれた家であった。また学校も学校の柵も、学校のはずれの十字路の街燈もたしかにまちがっていないうえに、その十字路を学校の崖下の方へすこし往って、枝の禿びた接骨気の木を目あてにしてその傍からおりていることもたしかに判っているので、他へ往っている気づかいはないので