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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页

青空文庫

「上から押しっけられ、持ち重りがして、どうにも呼吸が切れてしかたがない、義理も外聞も云ってはおられん、早う転ばしてくだされ」

その声は侍らしい壮い男の口から出た。それを耳にした七八人の見物人はどっと笑った。

「転べ、転べ」

所司代の役人の怒鳴る声がそこでもここでもしていた。

「こら、転ばないか」

役人の一人は鉄杖を持ち直して、脚下に転がった人俵の一つの胴中をびしゃりとやった。その人俵からは老人の白髪頭が出ていた。

「早う天主様の御傍へやってくだされ」

役人の鉄杖は続けておろされた。

「天国、天国、天主、天主」

老人の詞は切れ切れになって聞えた。

「こやつも火あぶりじゃ」

同役の一人はその人俵をずるずると引摺って水際の方へ往った。そこにはたくさんの薪を下敷にした上に二三十の人俵が積んであった。老人の人俵もその上に引あげられた。

そこの人俵から獣のようなうめきが出ていた。

日脚はもう未の刻を過ぎていた。宗徒の手入にすこしの手落もないようにと、板倉伊賀守と共に鋭い眼を四方に配っている大久保忠隣の傍へ、役人に案内せられて貧相な一人の僧侶が来た。

「この者が、訴人があると申しております」