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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页

青空文庫

ふと見るとその電燈の笠の内側に黒い斑点が見えた。それは壁虎であった。壁虎は餌を見つけたのか首を出したがその首が五寸ぐらいも延びて見えた。彼はおやと思って足を止めた。電燈の笠が地球儀の舞うようにくるくると舞いだした。彼は厭なものを見たと思って路の悪いことも忘れて小走りに左の方へ曲って往った。

※(ローマ数字「II」、1-13-22)

讓は奇怪な思いに悩まされながら歩いていたがそのうちに頭に余裕が出来て来て、今の世の中にそんなばかげたことのあるはずがない、神経のぐあいであんなに見えたものだろうと思いだした。しかし、それが神経のぐあいだとすると、己は今晩どうかしているかも判らない。もしかすると発狂の前兆ではあるまいかと思いだした。そう思うと憂鬱な気もちになった。

讓はその憂鬱の中で、偶然な機会から女を得たこともほんとうでなくて、やはり奇怪な神経作用から来た幻覚ではないだろうかと思った。

何時の間にか彼は今までよりは広い明るい通路へ出ていた。と、彼の気もちは軽くなって来た。彼は女が己の帰りを待ちかねているだろうと思いだした。軽い淡白な気もちを持っている小鳥のような女が、隻肱を突いて机の横に寄りかかってじっと耳を傾け、玄関の硝子戸の開く音を聞きながら、己の帰るのを待っている容が浮んで来た。