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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页

青空文庫

朱、紅、白といちめんに咲き乱れた花は美しかった。憲一はその花の間を縫うて往った。

林の端れは広い草原になっていた。そこに十坪位の小さい池があってきれいな水を湛えていたが、その池の縁にも紅紫とりどりの躑躅や皐月の花があった。憲一はその池の縁へ往って腰をかけた。

「あら、きれいだこと」

ふいに人声がしたので、憲一はおやと思ってその方へ眼をやった。今出て来た林の中に碧い瓦を葺いた文化住宅のような家があって、明けはなした二階の窓から白い二つの顔が覗いていた。

(おや)

憲一は首をかしげた。

(あんな処に家があったのか)

来るときにはどこにもそれらしいものが見えなかったので、憲一は不思議でならなかった。

(どうした家だろう)

その時また女の声が聞えて来た。

「もう、しめましょうよ」

すると二つの顔が引こんで窓の戸が音もなく締った。憲一の好奇心が動いた。憲一はその方へ往った。建物のまわりには円竹の垣根があって、玉椿のような木の花がいちめんに咲いていたが、それは憲一がこれまで見たことのない花であった。

(何の花だろう)

憲一はその垣根に跟いて往った。垣根が右に曲った処に青い石の門があった。