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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本怪談大全 第一巻 女怪の館』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟇の血、赤い土の壺、赤い花、馬の顔、切支丹転び、藤の瓔珞、草藪の中、仙術修業、頼朝の最後、雪の夜の怪、港の妖婦、神仙河野久、文妖伝、女賊記、春心、岐阜提灯、女の首、女の怪異、妖影、牡蠣船、雑木林の中。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 页
少女は莞として出て往った。憲一はまた考えた。
(どうした家だろう)
家の構えから見て、これはどうしても富豪の別荘であるが、人違いでないとすれば、何のために貧乏学生の己を呼び入れたのであろう。
(どうもおかしいぞ)
それに奥さまと云うのはどうした方だろう。憲一はどう考えても判らなかった。
「お待たせいたしました」
憲一ははっとして眼をやった。彼の三十位の背のすらりとしたな女が入って来たところであった。女は裾に花模様のある黒の錦紗御召を着ていた。憲一はその気品のある姿に圧せられるように思った。憲一は起ちあがった。
「どうか、そのままで」
女は微笑を見せながら憲一の傍へ来た。
「は」
憲一は棒のようになっていた。
「そのようにかたくるしくなさらないで、どうか」
「は」
憲一は眩しそうに女を見た。
「おかけくださいまし」
女は堅くなっている憲一を促した。女はそれから憲一のむこう側に腰をかけた。そこへ彼の少女がはいって来た。少女の手には酒肴を乗せた盆があった。少女はそれを卓の上に置いてから、小さな盃をそれぞれ二人の前へ持って来た。
「お酌しましょう」
少女は四角な瓶を持って憲一の傍へ来た。