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にっき
日記
宮本 百合子
10 一九二四年(大正十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,778 字 · 82 页
雨脚はしげく、風をさそって大夕立烟り、ざっざっと降りしきる雨のうちに、一本、立木が寂しい。セキとして人なしの感。
それから靄になり雲になり、やがて龍巻となって天上する。最後に、ひきしまった力の律動的な筆でなかなかよい。龍をはらんだ雲が定り通り巻きくるまって右にある。左に、さっと一抹の淡墨が、ひどく気魄にとんで居る。あの一はけがなかったら、さぞ物足りないだらけたものであったろう。ああ云う大切な、一筆は、前もって考えられて居たか、右の巻雲を、濃く重く濛々と描いたなごりの力が、さっと一筆彼の処をかすったか。その間の芸術心のリズムが私には同感され、或刺戟を受けた。
北野恒富の女性、淡い白と銀のトーンで唇もさびた紅で現わされて居る。彼はそれで、そのゴーストリーな美でよいとしても、他の後進、人物と云うと、皆、その色調を模倣し、もっと下らないものにして居ること、あわれなり。
龍子 覇気満々。新機軸を出さんとして、美的感興の欠乏を露出す、と云いたい。
賭博者 龍子だからこそならべてくれるのではないか。
盗心 ルドンのように行こうとして行きそこね。