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こよみ

暦

壺井 栄

「新潮」1940(昭和15)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,332 字 · 112 页

青空文庫

いねは聞きとがめて二人の前に立ち、

「数をよんでみい、少いもんにそれだけやるせに」

二人はそら豆を一つ二つと数えた。両方とも三十七粒あった。

「それみい」とはいったがいねは声をあげて笑った。いねのそうした子供の扱い方や、やりくりの上手さは、おいねさんのような女子になるようにと、できた子供に小いね、いね代などと名をつける人さえあった。そうしていね自身も七人目を生んだ。また女であった。

「もうここらでよかろ、スミエとしようや」

六日ざりの名づけの膳に向ってそういう重吉にかやは首をふり、

「まだお前、三十三じゃすむまいて、隼太のつれに男の子ができるようにアグリとつけいや」といった。アグリでなくてもアの字をつけると次に男が生れるという言草がある。それもそうかと赤ん坊はアグリとつけられた。

アグリは生れながらにして今までのどの姉たちにも求められなかった一家の希望を押しつけられて世に送りだされた。ところがその次の日からいねはふるえだし、あとは高い熱に浮された病人になった。金比羅さまへ願をかけたり、重吉が氏神様へ百度を踏んだりした。ようやく命は取り止めたと思った時には乳は止ってしまい、しかたなくアグリは近村の石工の家へ里子に出された。