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こよみ

暦

壺井 栄

「新潮」1940(昭和15)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,332 字 · 112 页

青空文庫

さっぱりと、久しぶりにのびのびしているのが読みとられた。よくよくの思いであったのだろうと、いねはあやまりたい気持で胸がふくれ上るように辛かった。八重と高子は月給を貰うとそれを出し合って新しい銘仙を一反買い、八重は自分のじみな着物を一枚添えて小包にした。その後ミチの夫の世話で、会社の得意先である神戸の松江作太郎に再縁したのであったが、作太郎はカヤノより十五も年上であった。

どちらかといえば子供たちは皆てきぱきと明るい気性であったが、その中でアグリ一人はどことなく他人行儀なようなところがあった。それをいねは、自分の乳を呑ませなかったせいだろうかとよく考えたりした。二十二と二十の未婚の姉をおいて、おとなしいというのを見こまれて、東京で肥料問屋をしている村出身の家から貰われ、おとなしく高島田に結って、つれに来たその夫についていったアグリであったが、次の年に長女を生み、一週間目にはもう死んでしまった。お産が近づくと、母親代りの世話をするつもりで上京した八重からの手紙で、アグリがけっして仕合せではなかったことをいねは初めて知った。熱に浮かされて、「おどれくそっ、人を欺しくさって!」