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こよみ

暦

壺井 栄

「新潮」1940(昭和15)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,332 字 · 112 页

青空文庫

悔いのない自分であろうかと省る時、いねはたださめざめと泣くよりほかなかった。泣きだせばこの病気特有の泣かれ方で、涙は尽きることを知らないように流れ、泣きぬれてやがていねはうとうとと眠りかかる。遠い、近い、さまざまの記憶が夢現の中に群がってきた。隼太と二人で観音の山を登っていた。隼太は一所懸命で自分の死んだことを否定する。

「土台、わしが死んだと誰がそんなばかげたことをいうたかしらんが、それをまた真に受けるお母さんもお母さんじゃ」

そんなこというたって現在お前の嫁のきみ子が、お前の骨壷を抱いて戻ってきて、私の膝に泣きくずれた。といねがいうと、隼太はそんなことは皆嘘で、お母さんの夢じゃといい張る。ああ夢かと初めて合点しながらもまだ信じられないでそうっと隼太の足に目をやると、隼太は靴をはいている足をいねの前につきだした。幽霊じゃない、幽霊じゃない、あれは嘘かいや、そうとは知らずにきみ子は孫をつれて親元い去んだのに。――いねは嬉し泣きに泣きむせんだ。いね、いねとゆすぶられてようやく目の覚めたいねは、泣きじゃくりながらもまだきょろきょろあたりを見回し、そこに重吉を見出すと、