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こよみ
暦
壺井 栄
「新潮」1940(昭和15)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 56,332 字 · 112 页
それらは皆寝たり起きたりの布団の上から手の届く場所に、それぞれの任務をもって重吉を取り巻いていた。三つ抽出の高膳もある。飯時が近づくとその匂いで重吉は膳の蓋をあお向け、茶碗を叩いて催促する。もうちょっと、と台所からそれに答える実枝になおも茶碗を叩き、皿を突きだしては叱られた。違い棚のついた小さい玩具のような茶箪笥の抽出には、いろんな薬といっしょにべい独楽やあめ玉の袋などもあった。膳の隣りにある小判型のうおぶねは手文庫に使われ、蓋をあけると子供たちの手紙や写真が雑然と入っている。それらの手紙や写真と同居しているのが釣道具であった。いか鉤や太刀魚鉤やべら鉤をかわるがわるに眺めては楽しむ。そんな時、ちぬを釣ってきていねにさしみを作って食べさせたことなど思いだして、きゅうに自分もさしみを食べたくなる。さしみを食べたい、といおうとして実枝の方を見ると、実枝が手紙をよんでいる。すると重吉の口はその気持におかまいなく、今夜は手紙を食いたいといってしまう。思わず心にもないことをいう自分をもどかしがりながら、顔ははあはあ声をあげて笑うのであった。実枝もいっしょに笑いだし、