轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ほんじょりょうごく

本所両国

芥川 竜之介

「東京日日新聞」1927(昭和2)年5月6日〜22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,005 字 · 43 页

青空文庫

だったであろう。僕は中学を卒業する前に英訳の「猟人日記」を拾い読みにしながら、何度も「お竹倉」の中の景色を――「とりかぶと」の花の咲いた藪の蔭や大きい昼の月のかかった雑木林の梢を思い出したりした。「お竹倉」は勿論その頃にはいかめしい陸軍被服廠や両国駅に変っていた。けれども震災後の今日を思えば、――「卻って并州を望めばこれ故郷」と支那人の歌ったものも偶然ではない。

総武鉄道の工事のはじまったのはまだ僕の小学時代だったであろう。その以前の「お竹倉」は夜は「本所の七不思議」を思い出さずにはいられない程、もの寂しかったのに違いない。夜は?……いや、昼間さえ僕は「お竹倉」の中を歩きながら、「おいてき堀」や「片葉の蘆」はどこかこのあたりにあるものと信じない訳には行かなかった。現に夜学に通う途中「お竹倉」の向うにばかばやしを聞き、てっきりあれは「狸ばやし」に違いないと思ったことを覚えている。それはおそらく小学時代の僕一人の恐怖ではなかったのであろう。なんでも総武鉄道の工事中にそこへかよっていた線路工夫の一人は、宵闇の中に幽霊を見、気絶してしまったとかいうことだった。