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ほんじょりょうごく
本所両国
「東京日日新聞」1927(昭和2)年5月6日〜22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,005 字 · 43 页
)僕はそこへ通っているうちに英語や数学を覚えた外にも如何に僕等人間の情け無いものであるかを経験した。こういうのは僕の先生たちや友だちの悪口をいっているのではない。僕等人間といううちには勿論僕のこともはいっているのである。たとえば僕等は或友だちをいじめ、かれを砂の中に生き埋めにした。僕等のかれをいじめたのは格別理由のあった訳ではない。若し又理由らしいものを挙げるとすれば、ただかれの生意気だった――或はかれのかれ自身を容易に曲げようとしなかったからである。僕はもう五、六年前、久しぶりにかれとこの話をし、この小事件もかれの心に暗い影を落しているのを感じた。かれは今揚子江の岸に相変らず孤独に暮している……
こういう僕の友だちと一しょに僕の記憶に浮んで来るのは僕等を教えた先生たちである。僕はこの「繁昌記」の中に一々そんな記憶を加えるつもりはない。けれどもただ一人この機会にスケッチしておきたいのは山田先生である。山田先生は第三中学校の剣道部というものの先生だった。先生の剣道は封建時代の剣客に勝るとも劣らなかったのであろう。何でも先生に学んだ一人は武徳会の大会に出、相手の小手へ竹刀を入れると、余り気合いの烈しかったために相手の腕を一打ちに折ってしまったとかいうことだった。