轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
01 第一部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 148,519 字 · 296 页
伊達安芸は酒を飲んでいた。給仕をしているのは、安芸の側用人の千葉三郎兵衛であった。千葉は甲斐を見ると、少しその座をさがった。
安芸宗重は白の清絹の着ながしで、あぐらをかいて、右手に扇子、左の手に盃を持って飲んでいたが、甲斐が坐ると、盃を持った手で「こちらへ」という動作をした。
甲斐は旅の無事を祝ってから、設けられた席へ坐った。
「久方ぶりだ、一つまいろう」と安芸が云った。甲斐は辞退した。
「人を待たせております、戻りをいそがなければなりませんので」
「こんな窮屈なことになっておろうとは思わなかった」と安芸が云った、「いつもこんなふうにして会わなければならぬのか」
「三月以来のことです」と周防が云った、「はじめは気がつきませんでしたが、密議に類することが、筒抜けに外へもれますので、注意してみると到るところに間者が配ってあるようなのです」
「話しを聞こう」と安芸は甲斐を見た、「下総の中田宿で松山どのからの密使に会った、藩家の大事について申し告げたいから、江戸入りは内密にして、まず此処へ来いということだ、それでゆうべ着いたのだが、そこもとが同席でなければ話しはできぬという」