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ししゃのけんり
死者の権利
浜尾 四郎
「週刊朝日 秋季特別号」1929(昭和4)年9月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,854 字 · 61 页
つまり春一に力任せに突き飛ばされて仰向きに仆れた途端に、壁に接していた大形のガスストーヴの鋼鉄に烈しく頭部を打っ突けて、即死したものであることが判明しました。
後に春一は私に対し、以下の如くに述べております。
「私とS法学博士の娘と結婚するという噂が知れますと、始めの中は小夜子は、頻りと私に手紙をよこしまして、そんなことは信じられない、又信じ度くもない、という様なことをいって来ました。所が暫らくたちましてから突然脅迫のような手紙をよこし出しました。又会いますと――会う場所は一定しておりませんでした――同じようなことを申します。つまり、もし私がこの儘小夜子と別れるならば、小夜子は黙って引き下らない、必ず仇討をする、その第一として私が彼女に送った多くの手紙を全部S博士方に持参して何もかもばらしてしまう、というような事を申すのでした。
これに対して私は、いつもはっきりした返事を与えませんでした。勿論彼女のいうようなことをされては私は非常に困りますし、当時うっかりしたことを申したら、小夜子は実際何をするか判らなかったのです。
一体小夜子という女は、所謂カフェーの女としてティピカルな女です。