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ししゃのけんり

死者の権利

浜尾 四郎

「週刊朝日 秋季特別号」1929(昭和4)年9月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,854 字 · 61 页

青空文庫

されたらしいのです。

然るに次の日の新聞紙には此の事件に関する記事は掲載されませんでした。その次の日も、またその翌日も新聞紙は、この事件について全く沈黙を守っていました。御承知の通り、あのころは他に××事件が起っておりましたから、新聞紙はその事件でうずめられ、須山春一の変死事件などは世人からも直ぐ忘れられてしまったのです。

私は、役所をやめてしまったので、変死事件の真相を知る手づるを失いましたが、実は何か詳しい報知を知りたい知りたいと思いながら焦慮していました。解剖の結果はどうか、当局者はどう見ているか、頻りに知りたかったのでしたが、役人でない私には取り調べる手段がなかったのです。

では何故私がそんなに当局者の意見を知りたがったか、ただ単なる好奇心からか。いや、そうではないのです。

実はあの月の末、私は奇妙な手紙を受け取ったのでした。御らんの通り封筒には差出人の名がありません。しかも大変遠くから来ています。ここで読んで見ましょう。あなた方にとっても面白いだろうと思われますから。

そうしてこれを読めば私が何故に、あのH山中の変死事件について知りたがっていたかということが判りますから。