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ししゃのけんり

死者の権利

浜尾 四郎

「週刊朝日 秋季特別号」1929(昭和4)年9月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,854 字 · 61 页

青空文庫

不幸にして――そうです、全く不幸にして――この肉身の愛を捨て得ないために、ここに或る事件を御報告致さねばならなくなりました。

一言で申します。妹は気の毒な女でした、私が、身持がおさまらぬので不幸な彼女は、身を売って親を救け弟妹を養わなければならなかったのです。もし私が今少ししっかりしていたなら、小夜子はカフェーに入らず従ってあんな不幸な最期を遂げなかったでしょう。それ故、私自身も彼女の死については責任を感じるのです。こう考えると、私が、妹の死屍を守るのは兄たる義務だと感ぜざるを得ませぬ。

私はこの聖き、妹に対する兄の真実の愛という名において、国家の審判に烈しき抗議を申し込む者です。

小夜子は純潔な少女でした。彼女は今も申した通り、親や同胞のために身を売ったのです。彼女はこうしなければ生きて行かれなかったのです。彼女はカフェー・パローマの女給となりました。何が故に、この犠牲は世の中から侮辱されなければならないのですか。誰が好んでこんな犠牲になるものですか。ならざるを得なかったのです。

彼女の犠牲の選び方が愚かであったといわれますか。それならば申します、人は食わんが為には、餓死せんとする時は、賢愚を考えておられないのです。