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ししゃのけんり

死者の権利

浜尾 四郎

「週刊朝日 秋季特別号」1929(昭和4)年9月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,854 字 · 61 页

青空文庫

と書いてあるばかりだった。須山家で非常に秘密にしていてこれ以上わからないのだが、君は知るまいがあの家は或る宿命的な病気の血統で呪われているのだよ。そうしてその病気は、よく隔世的に出るものなのだ。

「つまり斯ういう風に考えれば考えられぬことはない。例の秋田小夜子の事件当時、春一は自分の家に業病の血が流れていることを全く知らずにいたんだが、許されて家にとじ籠っているうちに、まあ蔵の中かどこからかその秘密の書いてあるのを見出したんだね、それが祖父の日記だか、他人の手記だか判らぬとして。そうして祖父が、だんだん身体がくずれて来て、生きた屍になって世と全く絶ち、ついに死んだということを知ったと想像することは出来る。若くは誰かから聞いたかも知れない。ことによると彼自身の身体に他人に見えぬところにどこか異常が現われたか(尤も之はどの程度に出れば、それと定められるのか医者でないから判らないが)ともかくそのいずれかだろう。問題は、彼は車中に既に死んでいたか、頭部を粉砕されるまでなお生きていたかだね。どうもそこがはっきりしないと解剖の報告にあるんだがいずれにせよ、極きわどい刹那の話だ。