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あぶらじごく
油地獄
斎藤 緑雨
「国会新聞」1891(明治24)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,624 字 · 69 页
ことはなく、学校の往帰りにも小歌が送迎いをするようで、間がな隙がな忘れたことがない。今まで二時間で済んだ下読も、一字一句小歌の笑顔が附て廻って、五枚のものを二枚目で一ぷく吸った烟の裡に、朦朧と水車の裾模様が現われ、続いて鳴鳳楼の座敷の始終がまたおもい出されて、つい四時間かゝっても満足には出来なかった、そして国元へ遣る見舞の状を書かけ、消しの出来たのを引裂いて二度の文言を案じる間に、同じく不思議が胸に浮んで、その消した紙へ、楷書行書艸書片仮名平仮名、何だか矢鱈に書きつゞけて、裏表とも真黒になッたのを丸めて投捨てた時、小歌という二字に限っての走り書が、自分で見て大いに上達して居た。
どうあってももう一度逢たい、ぜひ逢ないでは居られない、それには良家の処女とちがって、容易に簡便に、金で逢われるとは知ったが、それでその金がどれほど要るかゞ気に懸って、金はあるとした所で、かつて長野の学舎に在った日、夏夜舟行の記に、杜康を命じ蘇小を聘しと古い所を剽窃た覚えはあっても、今となって芸妓を呼ぶ手続が分らない、ほかでもないことを友達に聞うにも聞れず、聞たとて差支えるではないが、公園の薄茶一碗突合わずに居た