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あぶらじごく

油地獄

斎藤 緑雨

「国会新聞」1891(明治24)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,624 字 · 69 页

青空文庫

たので、この間にと皺のない紙へ皺をつけて、両女の坐って居た辺へ投出した、小歌は手水に下りたので、帳場の前で箱丁に何か云って居る処へ婢が来て、歌ちゃんあの方のお名前を知って居るかえ、いゝえ知らないよ過日鳴鳳楼で大勢の時お目に懸ったばかり、伺って御覧な、何とか云んだっけ、狡いよと笑いながらまた連立て登って来たが、その時広間の客は騒飽きて帰る所で、送出す芸妓の一人が、小歌がこちらへ這入ろうとして開た障子の隙から、通りがゝりに振向いて行たのを、貞之進はすでに見られてからなお顔を隠したが、残して在た一つの紙包を、箱丁へと云て婢の前へ投るように出したゞけは、秋元の女房が与って力ある所で、お礼をと婢が促して小歌と共に改めて手を支えた時、貞之進もこれに答礼せねばならぬような気持で、自然に頭が低ったように見えたのも奇であった。御飯はと婢が尋ぬるに、やめますと云えば、ぽっちり召上れ毒ですよと、傍から口を添た小歌の詞に、大真実が籠って居るように貞之進は請取れて、茶に漬てやっと一椀の飯を済した跡で見れば、最初一寸口をつけた椀の物の外の、白い